2017/07/24

秀吉の手紙 やいと

 「さすがお拾い(秀頼の幼名)のお母さんだね」と秀吉は賛辞を手紙にして茶々に送りました。

 秀吉からの手紙が見つかった、と7月8日の朝日新聞に掲載されました。秀吉50代、茶々20代。高熱を発した茶々が嫌いなやいとの治療を受けて解熱したことに対しての秀吉の気遣いが書かれていました。現代なら、高熱には抗生物質と点滴の投与で経過を見るところです。

 やいと(お灸)はもぐさを直に肌にすえることで病気を治療します。20代のちゃちゃだけでなく現代人でも熱くて眉をひそめる位苦手意識の強いものだと思います。当時それ以外選択肢はありません。お灸には、じかにすえる直灸、しょうがや塩を穴の上に置きその上からすえる隔物灸、棒灸のように穴から2-3センチ離してくゆらせる、針の頭にお灸の玉を載せて燃やす灸頭針などがあり病気によって使い分けます。

 さんまを送ったから食事をしっかりとって休養しなさい、今度能を一緒に見ようと手紙は続きます。

 歴史の一こまに、はりやお灸の話が登場するにはうれしいことです。安土桃山時代の鍼灸の隆盛に比べて、現代の鍼灸の廃れようが残念でなりません。

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2016/09/01

始皇帝と大兵馬俑展

 猛暑日、早く起きて始皇帝と大兵馬俑展(国立国際美術館、大阪中之島)を見に行きました。

 猛暑の外から、ひんやりの館内。地中から2100年後の現代に目を覚まされた兵馬傭たち。

 秦の始皇帝の命により約8000体の兵馬俑が地中に埋められました。日本に来ている本物は10体足らず。等身大より大きめで皆よく訓練されて精悍な顔つきでした。

 不老不死、不老長生願望は時の支配者だけではなく、この世に生を受けた人々の切なる願いです。始皇帝をさかのぼること約300年。戦国時代に黄帝内経素問霊枢(こうていだいけいそもんれいすう)という鍼灸の経典が作られました。針灸の最終目標は、不老長生。

 永遠のいのちを願った始皇帝も亡くなりました。きっと、はり治療も試したことでしょう。

 始皇帝の死後間もなく秦は滅びます。しかし、彼の理想の軍隊は地下世界で現代に至るまでその任務を遂行し続けていました。鍼灸治療は、現代まで伝承され続けています。この対比すごいと思いませんか?

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2014/08/24

気口九道 脈診の宝物

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ベージュ色のカバー、扁鵲(へんじゃく)が脈診を教えている姿の拓本図の体裁 「埋もれている脈診の技術 気口九道(きこうくどう)」   平口昌幹編著 (中華伝承医学会)   燎原 (定価4104円)が出版されました。

 埋もれている脈診の技術と副題にあるように現代日本の鍼灸界においては、脈を診て治療をする鍼灸院が少なくなりました。たとえば五十肩の場合では、


 患者さんの肩の痛む場所をしっかり観察する。可動範囲をみる。どの経絡が傷んでいるか。
 
 患者さんの五十肩がどういう原因で起きているのか。

 痛みををどういう手順により楽にしていくのか。


 気口九道脈診により、五十肩のどの経絡を傷めているかを判断することができます。経験を積んだ治療家なら可動範囲を見るだけでわかるかもしれません。新人鍼灸師も、気口九道脈診を知っていればピンポイントで穴を選んで治療することができます。

 どうしてそんな便利な脈診法が埋もれてしまったのでしょう?

 伝えてくれる師匠を見つけるのが難しい。その上脈診という微妙な感覚を会得するのに時間がかかります。「気口九道」は、その入門書となっています。伝承医学会では、20数年前より手取り足取り脈診の技術を教わってきました。ベーネ治療院の診療技術はすべてその恩恵の上になりたっています。

 「気口九道」は、脈診の入門編となりますが、治療の道が拓ける一歩となることはまちがいありません。脈診の宝物をダイヤモンドまで磨けるように、またそれを次の世代に伝承していきたいと思っています。

           

 

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2014/04/21

手当て  2

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 母の日の定番はカーネーションと肩たたき券。

 M子さん(38歳主婦)は肩たたき券をもらえないお母さんになりました。

 肩こりがひどいM子さんは、毎日のように小学生の娘さん2人に肩をもんでもらっていました。ひどくなるとマッサージに通い、肩には揉みタコができ岩のように盛り上がっていました。

 初めてはり治療に来院したM子さん、文庫本を片手に持ちベットに入られました。それを見たわたしは本のことを聞いてみました。面白い本なら5-6時間で1冊読んでしまうという。趣味はお菓子作り。消費税が上がる前にお菓子の材料をたくさん買ったことを話してくれました。

 M子さんの岩のような肩こりは眼精疲労によるものと、趣味のお菓子作りにより、甘いお菓子のとり過ぎの二つがミックスしていることが判明。

 はり治療は、足三里(胃腸を整え水分代謝を高める)、公孫(膵液を出し消化を助ける)、太衝(肝臓付近の栄養過多をスムーズにし吸収を速める)、曲泉(目に血液を送り眼精疲労を取る)などの穴にはりを打ちました。

 治療後、岩のような肩は小さくなり柔らかさがもどりました。

 「肩や目が楽になりました。肩にはりをしないのに不思議です」

 「肩痛の相手と武術の試合をする時、肩を攻撃するか、一撃必殺の穴を攻撃するか、速さが勝敗の決め手となります。医療はその逆です。手足にある肩に効果のある穴を脈を診ながら探します。肩そのものにはりやマッサージをするということは、肩こりの凝った結果にアプローチをしているだけで、肩こりの原因の治療にはなっていません。」

 M子さん、家に帰って初めてのはり治療のことを娘さん達に話をしました。肩たたきは手当てでありスキンシップでもあった訳ですが、肩こりはお母さんの養生如何によるということを気づいたのでしょう。

 「もう肩たたきはしなくて良いね」といみじくも言ったそうです。

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2014/04/14

手当てと鍼

 子供の頃わたしが熱を出すと、母は決まってわたしのからだを手でさすってくれました。「はやく元気になーれ」と。

 U子さん(45歳主婦)は、101歳のおばあちゃんと75歳の母親の二人を通いで介護しています。先日とても疲れた顔ではり治療に来られました。聞けば、介護している二人が調子を崩すたびにお見舞いに行き、手当てをしているということでした。

 「手当て?」

 「手でからだをさすってあげるんです。おばあちゃんは楽になったと喜んでくれます。でも、病院から帰る時自分はぐったり疲れます。」

 U子さんのからだを仔細に診て見ました。臍下三寸の関元穴に力がなく腎虚がひどい状態でした。

 わたしは、U子さんに鍼の歴史を教えました。初めは手当てから始まり、次に、石を鋭利に尖らせてあちこちの場所に手の代わりに当ててみる。石から材質が鉄や金、銀、銅とその性質を利用した使い方が考えられ、穴の発見はこの医学をこの上なく発展させる原動力になりました。

 「病気による苦痛を取り除くということは、マイナスエネルギー(邪)が取り去られ、プラスエネルギー(正気)が回復することです。邪はどこへ行くのでしょう?正気はどこから来るのでしょう?」とU子さんに聞いてみました。

 U子さんの優しい手当ては邪気と正気の出し入れに使われとても消耗します。小さいわが子に手当てをするのは母の愛情かもしれませんが、重い病の人を無防備にさするのは危険を伴います。

 手に鍼を持つことは、治療する側の身を守ることにつながります。剣を鍼に持ち替えて武術を医術に発展させた歴史に感謝です。

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2013/06/11

グランドマスター

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 雨降る街角、グランドマスターは10人以上の敵を一人二人と倒していきます。中国南派拳法の宗師(グランドマスター)イップ・マン登場のオープニング。

 ウォン・カーウァイ監督、トニー・レオン、チャン・ツィイー主演。「グランドマスター」を見に行きました。

 燃えよドラゴンのブルース・リーの師としてのイップ・マンは、南派拳法の詠春拳の宗師。揚子江の北から発祥した北派拳法の八極拳、八卦掌、形意拳などと南北の拳法の統一をまかされます。

 中国拳法の歴史は紀元前にさかのぼるといわれています。広大な国土の中でそれぞれ特異な拳法に発展し広がっていきます。平原の多い北では、跳躍が多い足技に、船などのせまい場所で戦うことが多い南では、手技に特徴があります。

 時は清朝末期、日中戦争のさなか、各流派のグランドマスターたちは、在野にまぎれその技を隠します。ある人は、骨接ぎ屋、ある人は、拳や剣をはさみにもち誓え散髪屋、また包丁とフライパンに持ち替え中華料理人、脈をみて薬膳料理人、ある人は、書家として糊口をしのぎます。作中のイップ・マンは苦難の末、香港に流れ着き武道場を開くことになります。

 ベーネ治療院でおこなっているはり治療は、一人のグランドマスターから伝承をうけたものです。はり治療理論、すいなマッサージ、中国整体、薬膳、季節の養生などです。

 映画を見て、苦難の末イップマンが次世代のブルース・リーたちに技を伝承したように、中国武術がはり治療という形に変ったけれど、自分たちだけでなく次の世代に正しい形で伝えていく必要があると思いました。
 

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2013/04/14

腰痛  2  アイスマン

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 1991年イタリアとオーストリアの境、標高3200メートルのアルプスの雪の中から5300年前の冷凍ミイラが発見されました。

 NHKスペシァル「完全解凍 アイスマン」と ETV特集「決定版5000年まえの冷凍ミイラ」を続けてみました。

 アイスマンは、推定46歳、160センチ50キロ、DNA情報により動脈硬化を起こしやすく、乳糖不耐症(牛乳アレルギー)遺伝子をもっており、ハーブで動物の肉を調理し小麦で焼いたパンを食べていました。メソポタミア文明のはしり先史時代のことです。豊かな食べ物だけでなく、99・7パーセントの銅で作られた持ち物の斧からはヨーロッパには高度な文明があったことがわかりました。

 からだには、15箇所のタトゥー(いれずみ)がありました。現代の鍼灸でも腰痛に使っている胃ゆ、三焦ゆ、腎ゆ、崑崙(こんろん)穴などにあたります。レントゲン撮影の結果腰椎すべり症があることも判明。現代にも通じる針灸治療をうけていたことがわかりました。医療の歴史をみなおす必要がありそうです。なぜなら、鍼灸は、2000年前の中国後漢時代に黄帝内経素問霊枢(こうていだいきょうそもんれいすう)という本が編纂され盛んになったものとされるからです。

 アイスマンが腰痛治療を受けている姿を想像してください。

 彼は何にも言わなくても、歴史を塗り替える事実であります。5300年前から連綿と続く針灸医療に携わっているわたしたちは誇りに思います。

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2010/06/10

未知の世界 3  電気エネルギーと津波

 生まれて5ヶ月の赤ちゃんが治療院にやってきました。つややかで水っぽい肌はまぶしいくらいに輝いていました。人の身体は80%水でできています。赤ちゃんの透き通るような肌から細胞の一つ一つ見て取れそうな感じがしました。

 身体には360こ以上の穴(つぼ)があり一つ一つが発電所の役割をになっています。

 12のたての経脈に肝臓、胃、肺、腎臓、などの内臓が関係をもち、横に絡脈がからんでいます。.80%の水分は流動的に効率よく時には血液として、時にはリンパ液として時にはからだを構成している細胞組織液として体の中を巡っています。ここに、よどみや渋滞ができるとこりや痛みがでます。、経絡のラインが断線することもあります。このときが穴の出番です。

 穴に針をします。刺された穴は、電気エネルギーを経ライン絡ラインに伝えていきます。スイナ治療(中国の医療マッサージ)では、穴から水力発電をして経ライン横ラインの津波として全身に伝えていきます。浅いところでは皮膚表面すれすれを走り、深くは骨部や内臓まで電気エネルギーや津波は伝わっていきます。どこに効かせたいかは、針を打つ穴や波打たせる部位によってちがってきます。直接痛む患部に針をして渋滞をとることは、手当て治療の基本ですが、せっかくのたて・よこ・12の経絡。その深さやそれぞれのつながり方の違いや特徴を利用しない手はありません。肩痛や腰痛に手や足に針やスイナをする所以です。

 未知の世界も種を明かせば、なーんだ・・・・・と身近に感じてくれましたか?

 ちなみに、赤ちゃんには12本の経脈や多くの穴はできていません。単純で水の流れも速く、軽くなでたりこすったりするだけで電気エネルギーや津波がおきてしまいます。

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2010/06/03

未知の世界 2

 37年前、鍼灸学校で初めて穴(つぼ)のことを習いました。当時、高校を卒業したところで東洋医学のことはさっぱり分かりませんでした。

 穴の位置と特性を暗記すれば試験には困りません。3年生になって臨床実技の時間になって困りました。実際に学校の付属診療所で患者さんに針治療するのですが、どこを刺していいのか検討もつきません。治療といえば、痛むところに針を刺すくらいでした。

 穴と穴をつなぐと線となります。人の体にはたてに12本の線(経絡のうちの経脈)が走っています。横にそれをつなぐ線(絡脈が)からんでいます。穴は発電所。経絡は、たてよこに張られた電線です。この中に、気という電気エネルギーが流れています。また、12本それぞれ内臓と深く関係しています。学生時代は、たてよこの線さえも生かすことが出来ずに、穴穴穴、点(1次元)の治療が精一杯でした。

 転機は、内弟子時代に出会った日本の古流の針術の夢分流打針術(むぶんりゅうだしんじゅつ)。点が皮膚表面の動きを意識するようになりました。(2次元)

 皮膚表面の穴から内臓までの深さや距離を考えると人間の体がにわかに立体に考えられるようになりました。(3次元)

 中国の医療マッサージのスイナを使えるえるようになって時間や動きを治療に生かせるようになりました。(4次元)

 人の体は千差万別です。4次元を自由に駆使できる時もあれば2次元3次元止まりのこともあります。精度を上げたいといつも思っていますが・・・。

 

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2010/05/27

未知の世界

 「僕は未知の世界へ来ました。」新患のAさんは、私の顔を見るなりそう言いました。

 Aさんは、春になるときまって息苦しくなり声が出にくくなります。教員の彼は声が命。自分で自分の体の制御ができないのが歯がゆいようでした。

 小児喘息があったこと。シャワー生活をしていること。慢性寝不足であること。春に調子を崩すことなどから、肺腎の陰虚症があり常に風邪ひき状態が続いていることがわかりました。
 
 肺の弱い彼の生活をチェックしながら針治療をしました。出にくかった声もその場で改善し息苦しさも無くなりました。針治療は不思議な未知なる世界ではありません。緻密な観察とデータ集め、綿密な戦略でもって弱いところを持ち上げたり、あまっているところを他にまわしたりしてからだのバランスを整えます。ツボという体のポイントの特性をうまく利用し、ツボの点(一次元)から平面(二次元)、からだの深部(三次元)、時間や動きのコントロール(四次元)まで行うことができます。

 Aさんの未知なる世界の初体験は、治療時間内で十分自分のからだの中で実感してくれたと思います。

 刻々と変化する人の体。「道のいうべきは常の道にあらず」という道教の無常につながっていきます。
 
 

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