« 長夏 | トップページ | 大人になるために »

2008/09/10

絵の具屋 佐伯祐三展

P9140114

 顔を絵のガラス面からゆっくり離し、一歩二歩三歩と後ろへ下がる。真っ直ぐとはお世辞にも言えないグニャリとまがった窓やドアの輪郭が、四歩目でピタリと焦点が合う。同時に 絵の具屋のよく磨かれた飴色の店先の全貌が浮かび上がる。

 夏の暑さが残る午後。佐伯祐三展を見に行きました。連日の診療の疲れで気分転換になればとの思いからでした。

 佐伯祐三は大阪出身。パリで30歳で夭折した天才画家として知られています。

 「絵の具屋」が描かれた1925年はすでにパリで名声を博していた頃。しかし、自分独自の画風を生み出すべく試行錯誤の時期と重なっていた時期でもあります。恐らく、この絵の題材となった絵の具屋には幾度となく足を運んだことでしょう。店のガラス窓から絵の具が陳列されているのが見えます。重厚な飴色の玄関扉を開くときっと油絵の具のにおいがするのでしょう。店先は何度も人の手で磨きあげられ、淡い光の中で古きよきパリの風景にとけ込んでいました。

 私のお気に入りの一枚はその後の彼の代表作「カフェ・タバ」「街角の広告」「広告貼り」「広告塔」「裏町の広告」という流れの通過点となりました。

 「絵の具屋」を描いて三年後、新展開を求めて再渡仏したものの病に倒れて亡くなります。人生30年はあまりにも短く、残された絵の一枚一枚の中に彼のパリへの思いが見えるようでした。


 帰り道、頭の中は古きよきパリの風景でいっぱい。少し、足が軽くなりました。
 

|

« 長夏 | トップページ | 大人になるために »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 絵の具屋 佐伯祐三展:

« 長夏 | トップページ | 大人になるために »